11月に入ると、「そろそろボージョレ・ヌーヴォーの季節だなぁ」と感じるようになり、すっかり日本にも旬の行事として定着した感のあるワイン。
毎年11月の第3木曜日午前0時に世界同時解禁となりますが、時差の関係で日本が世界一早く飲めると大々的に宣伝されたことや、飲みなれていない日本人にも飲みやすい赤ワインであったことが定着した理由ではないでしょうか。
ところで、「ボジョレー」と「ボージョレ」どちらが正しいかご存知ですか?
どちらも使用はされていますが、フランス語発音に近いものは後者の「ボージョレ」です。この特集を読まれた方は「ボージョレ」を使用されることをおすすめします。
ボージョレ・ヌーヴォーとは
ボージョレは、フランスのワイン産地名、ヌーヴォーは「新しい」の意です。
フランス・ブルゴーニュ地方の南端にあるボージョレ地区で生産されるワインの中で、その年の秋に収穫・醸造した、できたての新酒がボージョレ・ヌーヴォー。
そのフレッシュなワインは、1800年代からデイリーワインとしてボージョレ周辺の地元住民を中心に楽しまれていました。
1951年以降、パリのレストランを中心に大ブームとなり、1970年代に入ると陸路・空路の発達に伴い、そのフレッシュな味わいが日本を含め世界中に知られることとなりました。
収穫、醸造
2005年の実績では、115ヶ国45,000人が収穫を手伝いにボージョレを訪れたそうです。多くはワイナリーに寝泊りをして手摘み収穫を行います。
ブドウ品種は、皮が黒くて果汁が白いガメイ・ノワール種を使用。
ボージョレ・ヌーヴォーの製法は普通のワインの製造法とは少し異なり、「マセラシオン カルボニック」という醸造方法で造られるのが特徴です。日本語に訳すと「炭酸ガス浸漬法」と言います。
普通のワインの仕込みは、果汁が出やすいようにブドウ果実の皮を切るように破いて(破砕して)から、仕込みタンクに送りますが、ボージョレ・ヌーヴォーは、ブドウを破砕しないでそのままタンクに投入します。やがてタンク内には発酵により生成された炭酸ガスが充満します。このような状態でさらに発酵させてワインを造ると、渋みや苦味が少ないわりには色が濃いワインとなります。
味わいもフレッシュでまろやか、バナナのようなフルーティーな香りがあり、ライトでのど通りのよい飲みやすいワインに仕上がります。
そのため、赤ワインが苦手な人でもボージョレ・ヌーヴォーなら大丈夫という方が多いのです。

解禁日
さて、現在ボージョレ・ヌーボーの解禁日は、毎年11月の第3木曜日。
しかし最初は11月11日でした。1度、15日に変更され、さらに現在の第3木曜日へと変更されました。
日にちではなく曜日に変わったのは、解禁日を固定すると、年によっては土曜日や日曜日になってしまい、売れ行きや流通にも大きな影響があるためです。
以前は空港の通関で解禁されたため、空港近くのホテルで待機し、夜中午前0時過ぎに1分でも早く飲むというイベントが各社で行われていました。
現在は、前日には飲食店に届けられ、第3木曜日の午前0から楽しむことができるようになっています。
ただ、その約束を破って、一部の店では前日の水曜日に提供してしまうという掟破りが横行しており問題となっています。
良識ある経営者の皆様には、そのような行為をしないでいただきたいと思います。
今年の出来は? 2006年ヴィンテージ
ボージョレ・ヌーヴォーの今年の出来はどうなのかと、気にされる方が多いのですが、数万円もする熟成タイプ高級ワインのヴィンテージほど神経質になる必要はありません、
ヌーヴォーは、年ごとの品質差がそこまで大きくありませんので、あくまで参考程度とお考えください。
ボージョレでは収穫公示が9月5日に行われ収穫が始まり約3週間収穫されます。2006年は早熟な年で、特異な天候が特徴でした。
7月がとても暑く(1959年以来最も暑い年)、8月はとても涼しい(1968年以来最も涼しい年)天候でした。しかし1月から8月末までの気温の総和は2005年と同じレベルで、日照量も多かったと言えます。ぶどう畑の衛生状態も良好で、期待のもてる年とのことです。
現時点では、アルコール度は高めで酸がやや弱め、2005年に比べて、しなやかで柔らかみのあるタイプになるものと思われます。
種類
ボージョレ産のヌーヴォーには、大きく分けて2種類あります。
ボージョレ・ヌーヴォー(南部地区)と、さらに品質評価の高い北部地区の指定された村(ヴィラージュ)で生産されるボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォー。
後者のボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォーの方が、格上で凝縮感があるため価格もやや高いことが多いですね。
最近の傾向として、従来のさらりと飲みやすいタイプではなく、香味や渋みのしっかりした、有名ドメーヌ(生産者)のコクのある高品質タイプ(3,000円超の価格帯)も増えてきています。
さらに、オーガニック、ノンフィルター(無ろ過)、酸化防止剤無添加、古樹、スクリューキャップ、ハーフボトルなど、品質やボトルの差別化により、TPOに合わせ様々な楽しみ方ができる品揃えになってきました。
また、ヌーヴォーではありませんが、知らないと損する最高品質ボージョレワインが「クリュ・ボージョレ」。
「ムーラン・ナ・ヴァン」、「フルーリ」など10のクリュ(特定ぶどう栽培地)から生まれる、個性豊かで飲み応えがあり、熟成により真価を発揮するワインは、3年くらいは寝かして楽しみたい逸品です。
参考までに、ボージョレ・ヌーヴォーに白ワインはありません、しかしヌーヴォーではない普通のボージョレ・ワインには白ワインがあります。
極端に生産量が少なく白い真珠とも称される「ボージョレ・ブラン」です、くれぐれも「ボージョレ・ヌーヴォーの白をくれ」などと言わないように!
そして最後に、当然のことですが、新酒はボージョレ・ヌーヴォー以外にも世界中にあります。
日本でよく目にするのは、ボージョレ地区の北に位置する「マコン・ヴィラージュ・ヌーヴォー」や、イタリア産の「ヴィノ・ノヴェッロ」(11月6日解禁)です。
そしてもちろん「国産ワイン」にも新酒があります。
ぜひ、ワインセレクトの際に調べてみてください。
カフェでの提供スタイル
フレッシュさが特徴のボージョレ・ヌーボーは、渋みが少ないため、冷蔵庫で1時間くらい少し冷やしたほうがすっきりと美味しくいただけます。
早飲みタイプのワインなので、購入後はなるべく早いうちに使用すること。
トマト系パスタや、ローストチキン、甘醤油系和食、フレッシュチーズ、ドライフルーツなど、比較的どんなものでも合わせやすいので、まず気軽にトライしてみましょう。
ワインを数種類扱う場合のワインセレクトは偏らないことがポイントです!
軽いものから重いもの、こだわりの強いものなど、バリエーション豊かな品揃えにするべきです。
不慣れなスタッフでも扱いやすい「スクリューキャップボトル」や、味の比較のため2本目以降におすすめする「3年熟成クリュ・ボージョレ」、解禁時期が早い「ヴィノ・ノヴェッロ」なども選択肢に入れてワインリストを作りましょう。
スクリューキャップが安ワインの代名詞だったのは過去のことで、品質重視の一部メーカーでも高級ワインに使用しています。(お客様にはまだ浸透していないので、こうしたお話をされて提供されたほうがベターかもしれません)
提供スタイルは中程度のワイングラスが一般的ですが、カジュアルさを演出するため、口のすぼまった焼酎グラスのようなものでも良いと思います。
お店のコンセプトに合ったバリエーションとスタイルでお客さまにワインを楽しんでもらいましょう。
とにかく、気取らずカジュアルに飲むのが楽しいワイン、それがボージョレ・ヌーヴォーなのです。
解禁は来月!楽しみですね。
(文/山上昌弘)