器の素材感・色彩・形状によって、料理はぐんと引き立ちます。
美味しさの演出に欠かせない「器」。今月はカフェで"使える"器についてがテーマです。
「わあ、美味しそう!」料理をお出しした時に、この言葉が出れば大成功。
その料理は必ず美味しく食べていただけます。なぜって「美味しそう」の裏側には「食べたい」気持ちが起きているからです。「食べたい」気持ちは消化液を分泌させ、食べ物を積極的に体内に取り入れます。消化液の分泌が「美味しそう」という気持ちを引き起こしているともいえます。
「美味しい」の要素

どんなときに「美味しそう」と言う言葉が出てくるのでしょうか?
食べる前に美味しそうと感じるのですから、「味覚」ではありませんね。「味覚」より先に美味しそうと感じるのは、「視覚」と「嗅覚」です。
とりわけ見た目の情報は大きく、何かを判断するときの約8割以上が視覚からの情報。
ではどんな料理が「美味しそう」なのでしょう?
まずは色彩や彩りです。一皿の中に赤、緑、白、黄色、茶色など様々な色が組み合わされていると、本当に美味しそうに見えます。特に食欲を増進させる赤や黄色の"暖色"は、料理をいっそう美味しそうに見せます。
次はボリューム感。「たっぷり」「こんもり」「ほんの一口」だったりと盛り付ける量は様々ですが、料理に合ったボリュームは美味しさをイメージさせます。
3番目に魚や野菜の特徴的な形や切り方。自然の持つ形の美しさや同じサイズといった統一感のある美しさです。
最後にキラキラ光るソースやとろみのついたタレの艶。料理や食材の艶は新鮮さのあらわれです。
そしてこれらがきちんとデザインされたものを見て「美味しそう」という感覚が生じるわけです。もちろん食べ物は器に盛り付けますから、食器との兼ね合いも重要です。
盛り付ける「容れ物」が料理を引き立てもすれば、かえって不味そうに見せてしまうこともあるのです。食器の色や形を上手に利用するのも料理技術のひとつです。
-Color- 器の色と料理の色
どんな料理にもあうのは、白無地の食器です。食材の色もソースの色もそのままの色で濁ることなく視覚に訴えます。どんな色とも相性がよく、シンプルにもソースで絵を描くような装飾的な盛り付けにも適しています。
特にフランス料理などのように「つややかさ」が大切なものは、白の磁器との相性が抜群。キラキラと光を反射する白磁器は、料理にきらめきを与えます。
色のついているお皿なら、その色の反対色を料理に使いましょう。緑色系統のお皿なら赤い色が映えます。いちごやにんじん、ピンクグレープフルーツ、そして生の肉なども新鮮で美味しそうに見えます。スーパーなどで緑のトレーに肉が盛ってあるのをご覧になったことがあるでしょう。あるいは、マグロの刺身などには大葉やパセリが添えてあります。これも赤い色を美しくおいしく見せる工夫です。
紺や藍色などの食器は、煮物や揚げ物をおいしく見せます。和食は特に照焼きや煮物など茶色っぽい料理が多いのですが、藍色は茶の反対色ですから食べ物を引き立てます。染め付けの小鉢にお芋の煮ころがしを盛ると、素朴な一品が上品な料理に変身します。天盛りにゆずなどを使うと、より効果的。黄色は藍色の反対色ですのでいっそう料理が引き立ちます。また黄色は目を引く誘目色なので、料理に視線が惹き付けられます。その上香りが食欲を増進させます。
ピンクのような柔らかな暖色は、料理を甘く見せます。赤は、甘さをイメージさせる色なのです。
反対に寒色系の淡いブルーなどは、甘さ控えめの印象になります。カロリーオフを印象づけたいときは、クールな色が良いでしょう。
-Material- 器の素材
料理を盛り付ける器の素材には、陶器、磁器、ガラス器、金属、漆器、木製品などがあります。
陶器

フランス料理をはじめとする洋食では、直線的できらきらと拡散する光が料理をおいしく見せます。緯度の高いヨーロッパでは、「明るさ」が美しさの大きな要素。明るくきらめく光がこんがりと焼けた色やとろけるチーズを美味しそうに見せてくれる器が好まれます。
こうした西洋料理には透明感のある真っ白な磁器、ちょっとアイボリーがかったボーンチャイナといった硬質のウエアに金を使った縁取りや藍色の染め付けという食器が適しています。
ロイヤルコペンハーゲン、ウェッジウッド、リモージュ、ヘレンドといった西洋の有名食器メーカーは磁器をメインに生産しています。どのメーカーでも色絵付けにおいては、食欲を増進させる暖色系のものが多く使い、「華やかな光」を演出しています。
磁器はカオリンという陶土を使い、1,200〜1,500度という高温で焼きます。そのためしっかりと焼き締まってかたく、丈夫な製品ができます。堅くなるので薄く加工することも可能。堅くて軽くて丈夫なことは食器において利点になります。ヨーロッパにおいてカオリンが発見されるまでは、中国や日本の磁器がもてはやされ景徳鎮や有田からたくさん輸入されました。東洋の美しい磁器をたくさん所有していることは、ヨーロッパの王侯貴族にとって一つのステータスシンボルだったのです。
ガラス器
ガラス器は光を通すという特徴を持ち、デザート皿やグラス類としての利用が主とされています。使い方次第で色々な料理にも使える重宝なアイテム。
異素材との相性もよく、陶器と組み合わせての使用もよく見かけます。
透過する光によってワインの色も、シャンパンやビールの泡もよりきれいに見えます。皿や器ならその透明感をいかして冷たさや涼やかさを演出できます。ゆえに冷製料理によく使用されています。
ガラス器は器自体のカットや色味の美しさで料理を美しく見せる、エレガントな素材。少し洒落た盛り付けを...という時に活躍してくれます。
漆器
漆器はとても美しいものですが、高価で取り扱いに注意を要します。お椀や鉢をレストランやカフェで気軽に使うというのは難しいかもしれません。それでも豆皿や箸置き、ティースプーンやフルーツフォークなど、小さなものを使ってみてはいかがでしょう? どんなときでも、遊び心は人を楽しませます。オシャレなカフェでレトロなテーブルウエアといった意外性は、エンターテイメントとして効果的です。漆器は心を和ませる要素を持っていますから、お客さまにリラックスを提供できます。今はカフェやレストランで使えるような現代的なデザインのものもたくさんあります。手作り感いっぱいのカフェでかわいい漆の箸置きなど、小さなもので試してみると案外にマッチするものです。
お店で提供する食べ物は味覚として美味しいのは当たり前のことです。その上で、美味しく見える食器の使いを工夫しましょう。
ポイントは、料理との色の相性、ボリューム(サイズ)、素材感。試作をする際は、味のチェックだけでなく、同じ料理を違う器に盛って視覚的に「美味しそう」かどうかを必ず確認してください。
商品のクォリティがワンランク上がります。
お客さまと料理の"出会い"...みかけはとても大切なのです。「美味しそう」が「食べたい」を引き起こすことをお忘れなく。

(文/井田ようこ)