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特集

料理の名脇役-スパイス-

夏のメニューをそろそろ考える時期がやってきました。スパイシーな料理もすっかり日本の夏定番となっていますが、一工夫して他店にない一品が欲しいところ...そもそもスパイスとは...
今月のテーマはスパイスです。

世界中にスパイスと呼ばれる香辛植物は、いったい何100種類あるのであろうか。一度でいいから世界中のスパイスを味わってみたい。そもそも香辛植物とは、「それぞれ特有の香味や辛味を有し、料理などに加えることにより風味(価値)を高め、他の食材の旨味を向上させる役割を持つ植物」のこと。植物体の一部、すなわち植物の果実、花、蕾、樹皮、茎、葉、種子、根、地下茎などを乾燥させたもので、まさしく料理に不可欠な"名脇役"だ。
時代の風潮の変化によってその価値観は異なり、「栄養(食べる事)→嗜好(グルメ)→予防(食べて健康な体を)」と現在へ変化してきた。この香辛植物を大別すると、温帯原産の「Herbs(ハーブ)」と、熱帯原産の「Spies(スパイス)」に分かれる。今回は、後者の「Spies」の扱い方などを追究したい。

香辛料、スパイス

スパイスの歴史
古代よりスパイスは「生薬」として珍重されてきた。紀元前約1550年頃に書かれたと思われるエジプトの医学書『エーベルス・パピルス』には、アニス、キャラウェイ、カシア、カルダモン、マスタード、セサミ、サフランなどが"軟膏薬"や"油薬"に用いていたことが記録されている。また古代エジプトでは、プラミッド建設を担った労働者たちに大量の「玉葱」と「ニンニク」を配給し、スタミナ源(肉体強壮の薬)とした話は有名である。古代中国(漢)においても、宮廷官吏が王子に政事を奏上する折、一本のクローブを口に含んで口臭を消し、吐息を清める香薬として用いられていたなど、いずれも食品というよりは「薬」として貴重な存在だったようだ。
中世に入る頃には、スパイスは金銀に匹敵する高価な財宝として取引がされ、生産管理権を巡ってし烈な争いが繰り広げられることになる。
その後、中世ヨーロッパでは、生薬としてのスパイスでなく、食用としてのスパイスへと需要が大きく変化した。特にヨーロッパは"肉食文化圏"であるため、肉の臭みを消すスパイスの需要は飛躍的に拡大。その代表例が「胡椒(Pepper)」であり、世界の食の歴史を大きく左右したスパイスの一つだ。
日本におけるスパイスの歴史は、山椒や生姜などは古事記にも記されており、意外と永く"薬味"としては使い慣れていたはずであったが、"スパイス"というと直感的に舶来品であるかのような印象が強く、シナモン、クローブ、ナツメグ、ローリエなどを店頭に並べても、昭和40年代の日本では家庭の食卓で使われることは殆どなかった。
そもそも日本においては、気候風土に恵まれてきた関係から、山海の幸を比較的容易に入手し新鮮な状態で食することが出来た。そのため、ヨーロッパの食文化とは異なり、強い香りづけや消臭効果を求める必要がなく、素材本来の持ち味を生かすような調理が主流だったのだ。また、鰹節、昆布、干し椎茸の味に代表されるアミノ酸や核酸系の旨味物質によって日本人の味覚は繊細に培われてきた。したがって、伝統的な日本料理に「薬味」を用いる場合でも、素材の味にアクセントを添える程度であり、薬味自体で味をつけること自体、必要がなかったのだ。

系統別スパイスの特性と取扱の注意点
I 香気系スパイス/高温に留意
デゥル、セロリ、キャラウェイ、カシア(桂皮、肉桂)、ニナモン、コリアンダー、
クミン、ガジュツ、レモングラス、カルダモン、クローブ(丁子)、フェンネル、
スターアニス(八角)、ジュニパー、ナツメグ(メース)、ポピー(ケシ)、オールスパイス、アニス、セサミ(胡麻)、タマリンド、フェンネグリーク、バニラ、ローリエ、ガーリック、その他ハーブ類
何100種類もあるスパイスだが、「特有な香り」を持っていることは共通している。しかも世界各地の全ての料理は、スパイスが有する特有な香りが風味の源になっているのだ。スパイスの香気成分は一つの物質から発しているものではない。例えば「香りの王様」と称されるカルダモンの香りは、テルピネオール、テルピニールアセテート、シネオール、リモネン、ボルネオールなどを主成分として挙げられるが、その他微量成分も含めると数10種類にも及ぶ。この多くの成分の組合わせこそがスパイス特有の香りを作り上げているのだ。「香気成分」は全て揮発性という性質を持っている。故に香りが広がるのだ。
そのため、スパイスの加工、包装、保存、使用に際し、できるだけ「高温」を避け、密封できる容器を用いることが高品質を保つ重要ポイントといえる。

II 辛味系スパイス/湿気を嫌う
マスタード(芥子)、チリ(唐辛子)、ペパー(胡椒)、チュバブ、ファガラ(山椒)、ジンジャー(生姜)、ワサビ、ホースラディッシュ(西洋ワサビ)
「辛味成分」を有するスパイスの場合、さほど香気性に富んだものは少ない(ネギや生姜は除く)。そのため、少々の高温環境でも品質の消失はない。むしろ温度よりも、辛さを発揮させるのに必要な「酸素」の効力を保持することや、「湿気」による辛味成分の分解消失を防ぐことが上手く保存する重要なポイントだ。ただし、"芥子(マスタード)"や"ワサビ"といった「香気成分」と「辛味成分」の融合から生まれる特殊なスパイスの保存については、「温度」、「水分」、「気密性」の3つの条件を満たすよう心がける必要がある。

III 色素系スパイス/光から避ける
サフラン、ターメニック(ウコン)、パプリカ、紅花、クチナシ、パセリ
スパイスには香気性に優れたものや、特有の辛味を持ち合せたものなど多彩であるが、もう一つ「色調」に富んだスパイスの存在を忘れてはいけない。色素系の代表例としてカレーに欠かすことのできないターメニックや、パエリアに用いられるサフランの黄金色(クルクミン、クロシン)。パプリカの橙色(カロチン)。パセリの緑色(クロロフィル)。赤ジソの紫色(アントシアン)など。他の系統に比べるとそんなに多いわけではないし、単純な色素成分(内)で構成されている。しかし、天然系の色素成分の場合、共通して「光(紫外線)」に弱い性質を持っている。したがって、包装には遮光性の材質を択んだり、ブリキ製の容器を用いたりする工夫が重要なポイントである。

面白い使い方
胡椒アイスクリーム
--お酒の後の〆にお薦め--
【作り方】
市販のアイスクリーム(バニラorミルク味)に、粗挽き胡椒を加え練合せたもの。
胡椒を加える分量はお好みで。
※胡椒は、ブラックペッパーの方が香り高く望ましいが、無い場合はホワイトペッパーでも可能。

以上、各種スパイスの特性と扱い方を中心に紹介をしてきた。まだまだ書き切れない程、スパイスの魅力は無限だが、唯一〆の言葉にするならば、スパイスの"香り""色合""刺激"が世界中の食文化を発達させ、地域に根づいた味わいを創造して来たことは過言ではない。今後、料理のアクセント付けにスパイスを使うだけでなく、そのスパイスが歩んできた歴史や文化的価値を再考することで、よりよい食文化形成に繋がると私は思う。
さまざまな香辛料とスパイス
(文/松本栄文)








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