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特集

攻撃型店舗 移動販売を考える

バブルの終焉と共に迎えた21世紀、景気低迷に伴いこれまで成長を続けてきた日本の外食産業も低迷期に入っています。
先の見えない飲食業界に大きな投資がしにくい昨今、"移動販売"という店舗形態が目立つようになってきました。
今回は移動販売の本質に迫ってみたいと思います。

昔ながらの移動販売という業態

さて、景気低迷に伴って移動販売がクローズアップされるようになりましたが、振り返れば随分前から移動販売は存在していました。
古くは江戸時代以前からの行商人も移動販売の一つのスタイルだと言えるでしょうし、竿竹屋や石焼芋といった移動販売は昭和の風物詩でもありました。
移動販売は昔から流通と販売を一貫して行うことで、顧客に対して常に"攻撃型"の営業を展開してきました。
移動販売という店舗形態が"攻撃型"であると言われる理由は、対象顧客が存在する【場所】や【時間】を狙って能動的に出店できるということにあります。
反対に、一般的な店舗は【場所】が固定されている"受身型"とも言えます。

移動販売のメリット・デメリットを考察する

移動販売の本質を探るにあたり

 1.保健所への届出
 2.建築法規
 3.道路交通法
 4.資産としての考え方
 5.店舗準備のための資金調達
 6.流通とストック

以上6つのポイントについて、「移動販売」と「固定店舗」を対比しながら話を進めていきたいと思います

1.保健所への届出
実際に移動販売を始めてみようと志したことがある方は、保健所の営業許可を得るためには多くのハードルがあることを実感されたことでしょう。
移動販売の許可を得るための条件として以下のようなものが挙げられます。

・運転席と調理場は壁で仕切られていなければならない
・自宅以外の仕込み場所が必要
・業態によっては200リットル程度の給水タンクが必要(自治体により内容が異なる)
・規定の排水タンク容量が必要
・規定数のシンクが必要
・換気が必要
・棚の設置が必要

移動販売というとかなり自由に開業できるような印象がありますが、実際には種々の法的拘束を受けてはじめて成立します。
「移動販売なのに何で仕込み場所まで借りなきゃいけないんだ?」という話はよく耳にする内容です。他にも200リットルの給水タンクというのも結構な大きさで、もちろん人手で運べるような重さではありません。
移動販売を始めるにも、保健所だけでこのようなハードルがあるんですね。
かといって固定店舗が優遇されているわけではありません。
手洗いやシンクの設置に関しては、サイズの規定など固定店舗は移動販売以上の制約を受けますし、諸設備に掛かる費用は移動販売と比較しても高額になりがちなのも事実です。

2.建築法規
一般的に移動販売と呼ばれるような店舗に関しては、建築物ではありませんので建築法規には触れません。
建築法規の規制を受けるのは固定店舗です。
固定店舗の場合、一通りの建築法規に準拠することや、用途申請との整合性、消防法の適用を受けた火災時のための対応等が必要となります。
この点において、全面的に移動販売はフリーな状態と言えます。

3.道路交通法
逆に移動販売でよく指摘を受けるのが道路交通法への抵触です。
よく繁華街の道端に路上駐車し、商売をしている販売車両を見かけますが、道路交通法に照らし合わせると道路使用許可等の申請を事前に行って受理されない限り、あくまで公道ですから勝手に利用することはできません。
福岡県博多の屋台など、一部地域では特例もありますが、移動販売の場所確保には、きちんとした手続きが必要であることを忘れてはいけません。

4.資産としての考え方
次に、店舗を資産として考えた場合に「移動販売」は動産となり、「固定店舗」は不動産となります。
(ここで言う不動産は土地の権利に限らず、移動のできない資産と解釈してください)
この点は長期的に見ると非常に大きな違いとなります。
移動販売の場合は場所の移動に係わらず、資産としては車両の耐用年数に比例して中長期的に資産価値を持ちますが、固定店舗を移動(移転)させようとした場合、内装造作に関しては壊して引き払うのが通例=基本的に造作は移動させることができません。
業績不振により廃業される場合には、車両はそれ自体が資産として残りますが、固定店舗の場合、資産は無となり、一部例外を除き*1、現場復帰に係る費用を負担する必要があります。

*1:造作譲渡などが可能な場合

5.店舗準備のための資金調達
移動販売の資金調達に関する落とし穴を一つお話しておきます。
よく移動販売の車両購入のために自動車ローンを利用しようと考えている方がいらっしゃいますが、基本的に移動販売車両に自動車ローンは使用できません。
移動販売車両は改造車という位置付けとなるため、自動車ローンの適用対象から除外されてしまうためです。
自動車ローンという選択肢を除くと、恐らく移動販売も固定店舗も資金調達の方法や選択肢はさほど変らないと言っていいでしょう。
ビジネスモデルとしてしっかりした内容であれば、諸金融機関との折衝はどちらも相違はないと思います。
投資コストについては、物件取得費や造作の規模、設備関係など、移動販売は低投資で開業できることがメリットと言えます。

6.流通とストック
最後に流通とストックに関する考察です。
移動販売は自身の車両が食材流通の手段でもあるため、ある意味流通手段としての意味合いも持ち合わせています。
ただ、これまでの移動販売の実績を見ていると、移動車両のため材料ストックスペースに制約があり、一日あたりの売上の上限が低くなってしまうという現実があります。
せっかく攻撃的に人の多い場所に店を出しても、売上高の上限が限られてしまうというのは面白くありません。
しかし、この点に関しては様々な改善の余地があると思いますので、業態構築の側面からも大いに工夫ができると思います。
固定店舗においては客席数等から売上高の上下も予測できますので、見合ったストックスペースを確保しておけば問題ないでしょう。

こうして両者を比較してみると、移動販売の面白さや可能性が見えてきませんか? 固定店舗に比べると課題も問題点も異なる点が多く、独特な専門性を必要とするかもしれませんが、まだまだ多くの可能性を秘めた領域であるともいえるでしょう。 あなたが移動販売を始めるとしたらどんな商品をどんな場所で販売しますか!? 秋の行楽シーズンとなりますが、そんなことを考えながら街を歩いてみるのもまた面白いかもしれませんね。


(文/チェーンコンサルタント 熱田 大)

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